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ねむり(村上春樹)

人間は思考においても肉体の行動においても、一定の個人的傾向から決して逃れることはできないと、著者は述べていた。

人は知らず知らずのうちに自分の行動・思考のパターンを作り上げてしまうものだし、一度作り上げられたそのような傾向はよほどのことがないかぎり変更できない。

そして、眠りこそがそのような傾向のかたよりを―靴の踵の方減りのようなものだと筆者は書いていた―中和するのである。

それでは私の人生とはいったい何なのだろう?私は傾向的に消費され、そのかたよりを調整するために眠る。それが日々反復される。

その反復の先に何があるのだろう? いや、何もないと私は思う。

眠りなんかいらない、と私は思った。眠れないことで私が「存在基盤」を失うとしても、仮に発狂するとしても、それでもいい、かまわないと私は思った。私は傾向的に消費なんかされたくない。