たましいのこと(松村潔著)
太陽は下に向かって太陽であり、上に向かって月である。(112)
天女は地上に閉じ込められた段階で、日常的な事柄に熱中する感受性に変わったが、もとの故郷とのかかわりを取り戻すとまた天に戻っていく。
実は天女とは、わたしたちの感情のことを示していて、天を飛翔していた時の感受性は大きな自由をもっていたが、地上に閉じ込められた段階で、日常の小さなことに熱中するようになった。
日常の事柄に集中すると、細かいところでのとらわれから否定的な感情に支配されるようになる。
世界はもう町の中にしかなく、それ以外はこの世に存在しないかのように矮小化されていく(121)
春分点と秋分点で陰陽帳消しになるというのは、活動力に一瞬の空白ができることで、つまり能動と受動という区分がなくなることで、フッサールのいうように意識活動ができなくなる。その瞬間により大きな上位のコスモスの影響を受け入れる瞬間ができる。(131)
この老人は十牛図の説明によると、見知らぬ外国語を話し、鉄棒をもち、どこからきたかわからない怪しい気をたたえ、町の人々はその人を見て、どうやら歓迎したいと思わないらしい。・・・町の名士は町の中でのみ作られる。真に悟りを得た人が尊敬されることはそう多くない。山から下りてきた老人は違和感があって、街にはなかなか受け入れられない(117)