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人間に認識できない法則は存在する?ボームの「明在系」と「暗在系」

デヴィッド・ボームの明在系と暗在系について、まとめてみました。

 

▽ 量子の次の瞬間の運動量・位置は、確率的にしかわからない 説

 

理論物理学者のニールス・ボーア氏(ノーベル物理学賞受賞者)
量子力学では、すべてのことがらは確率的に生じていると考えられていて、因果性そのものが、成り立っているように見えるだけだとしています。
出典 因果性とは~五感を通じて知る世界は氷山の一角~ - 精密な生命世界

 

▽ 量子の運動量・位置は、人間に観測できない系で決まる 説

 

ボーム氏は、一般に二つの事象が因果関係にあるように見える場合、要因と考えられるいっぽうは、意味のある原因のひとつだと考えました。([※3]『現代物理学における因果性と偶然性』)
出典 因果性とは~五感を通じて知る世界は氷山の一角~ - 精密な生命世界

 

「われわれが五感を通じて知る世界は、いろいろな事物に分割され、部分化されているが、それらのものは暗在系[※1]に対する、明在系であり、明在系においては、外的に個別化され無関係に存在しているような事物は、実は暗在系においては、全き存在として、全一的に、しかも動きをもって存在している。」(p.58)
出典 因果性とは~五感を通じて知る世界は氷山の一角~ - 精密な生命世界

 

以下の3つは河合隼雄氏の同著書から抜粋したものであり、同じくD.ボーム氏の見解を引用しています。

理論物理学者のデイヴィッド・ボームは、われわれが知覚している世界は、一種の顕現の世界であり、その背後に時空を超えた全一的な、彼の言う暗在系(implicate order)を有しているとの画期的な考えをもつようになった。(p.57~58)

人間はものごとを知覚する際に相当な捨象を行い、顕在系として存在しているものを知覚する。(p.58)

ボーム氏の言葉を借りると「物質も意識も暗在系を共用している」のだから、すべての事象は人間の意識とつながっているわけである。(p.58~59)
出典 因果性とは~五感を通じて知る世界は氷山の一角~ - 精密な生命世界

 

因果性とは~五感を通じて知る世界は氷山の一角~ - 精密な生命世界

 

▽ 明在系=断片的記述 暗在系=世界的記述

 

ボームは部分と全体を分けたくない。断片的記述と世界的記述を分けたくないのだ。ボームにとっては断片化は世界観を中断し、ときには固定化するものなのである。だから部分と全体を分けたくない。分けたくないだけではなくて、そのあいだに間断なき「流動」(flowing)があると見たい。この流動は物質の運動であって、時間の流れであって、空間の継続でもあるが、ボームにとっては思考そのものの様式の問題で、かつまた言語の様式の問題でもあった。
出典 1074夜『全体性と内蔵秩序』デヴィッド・ボーム|松岡正剛の千夜千冊

 

ラテン語ギリシア語では、健康(health)と全体(hale)は同じ語源になる。神聖(holy)と全体(whole)も同じ語源だ。また、理論(theory)と劇場(theater)も同じ語源で(テオリアから派生した)、どちらも世界を見るためにある。ここまではいい。ようするに名詞はうまく選びさえすれば、実はつながっていく。
出典 1074夜『全体性と内蔵秩序』デヴィッド・ボーム|松岡正剛の千夜千冊

 

1074夜『全体性と内蔵秩序』デヴィッド・ボーム|松岡正剛の千夜千冊

 

▽ 見える世界「顕前秩序」 見えない世界「内臓秩序」

 

さて、ボームは見えない世界を「内臓秩序」(implicate order=暗在系)と呼んでその実在を認め、見える世界を「顕前秩序」(explicate order=明在系)と呼んだ。彼の次の言葉がわかりやすい。

近代の科学と技術はすべてのものの分離を強調するデカルト的考えに強く影響されている。われわれはそれに対して思考や五感を超えた運動の全体性である『暗在系』の理論を提唱する。人々が見聞している世界(明在系)の背後に分断も境界もない流動する関係性の全体(暗在系)があり、意識も物質もそこから展開してくる。これはインドや中国の宗教思想に似た、東と西に橋をかける考えだと思う(1)。
出典 空と縁起の一考察 ⑥|高橋憲吾のページ -エンサイクロメディア空海-

 

近代科学は「観測できる実在」だけを、すなわち言語化できる「明在系」の内側だけで世界観を作り上げてきた。今日の科学は二千年以上も前にデモクリストスが提唱した原子論的思考以来、その伝統的思考を脱しているとはいえない。つまり宇宙万物は本質的に虚空の中を運動する原子によって構成されているという考え方である。言い換えれば、宇宙全体を微細に分割すると、最終的に断片化された原子という構成要素に還元されるとする西洋特有の思想である。
出典 空と縁起の一考察 ⑥|高橋憲吾のページ -エンサイクロメディア空海-

 

▽ 部分が全体であり、全体が部分である

 

ボームのこの発見は、フィルムの一部分だけから全体が再現できるホログラフィー(完全写象法)のモデルと結びついて「部分が全体であり、全体が部分である」暗在系のパラダイムに結実した(2)。
出典 空と縁起の一考察 ⑥|高橋憲吾のページ -エンサイクロメディア空海-

 

(2)ホログラフィーは、光の干渉性を利用した一種の写真技術である。通常の方法による写真のフィルムからはスライドや映画のように、二次元の像しか再生できないが、ホログラフィーによって得られたフィルムからは三次元の空間に再現できる。この技術を使ってフィルムに物体の情報を記録したものをホログラム(完全写像記録)と呼ぶ。この名はギリシャ語で「全体」を表すholoと「書く」を表すgramとからつけられたものである。(『ニュ-サイエンスの世界観』)
出典 空と縁起の一考察 ⑥|高橋憲吾のページ -エンサイクロメディア空海-

 

▽ 全体が個を構成している

 

マンダラの思想を科学的にみれば、個が集まって全体(大日)を構成するのではなく、全体(大日)が個を構成しているとみるべきであろう。だから炎を背にして憤怒の表情をもつ不動明王は、実は大日如来の化身であるように、マンダラの個々の尊格は大日如来の全体性の側面にすぎない。
出典 空と縁起の一考察 ⑥|高橋憲吾のページ -エンサイクロメディア空海-

 

空と縁起の一考察 ⑥|高橋憲吾のページ -エンサイクロメディア空海-

 

▽ デカルトの実体二元論(心身二元論

 

ヨーロッパ近代哲学の祖とされるデカルトは、一方では神の存在と霊魂の不滅を信じながらも、心(非物質的魂)と身体(心の自由意志にしたがって機械的運動を行う物体)を各々独立の実体とみなす実体二元論によって近代の物心二元論創始者となった。

以来、心と物は科学的対象として明確な区分を与えられ(この二分法の帰結として、例えばわが国でも最近まで心理学科は文学部に属していた)、物についてはニュートンが確立した古典物理学の機械論的自然観の採用とあいまって、きわめて合理的な考え方をとることが可能となった。

しかしその一方で、神や霊魂の世界への確信は失われていき、ついには人間機械論さえ唱えられるなど、西欧の精神世界が価値や生の目的、真理の喪失とともにニヒリズムという精神的危機とも対決しなければならなくなったことは周知のとおりである。
出典 https://core.ac.uk/download/pdf/72752024.pdf#search='%E3%83%87%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%A0+%E6%98%8E%E5%9C%A8%E7%B3%BB'

 

(1)古代ギリシアキリスト教一神教)に由来する西洋的精神文化では、一者(単一の原理)が分化、発展して自己の形を限定することをめざし、空間的にも自己の外に向けて展開
(develop)していくのに対し、

 (2)東洋的精神文化では、宇宙を統一し支配する原理はどのような人間の立場や理解をも超えており、言外に隠れているが、その代わりに個々のものは有機的部分としてすでに全体(部分の総和以上のもの)を含蓄、含意する(implicate)― たとえば個々の細胞の身体に対する関係のように― 傾向がある。
出典 https://core.ac.uk/download/pdf/72752024.pdf#search='%E3%83%87%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%A0+%E6%98%8E%E5%9C%A8%E7%B3%BB'

 

デビッド・ボームが提案した新たな形而上学の構想
出典 https://core.ac.uk/download/pdf/72752024.pdf#search='%E3%83%87%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%A0+%E6%98%8E%E5%9C%A8%E7%B3%BB'

 

心身統合と時空統合の問題 ――「故郷をもった知識」の基礎を哲学的に考える