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シッダールタ(ヘルマン・ヘッセ)

たしかに神聖な経典、とくにサーマ・ヴェーダ(沙磨吠陀)のウパニシャッド(奥義書)の中の多くの詩行が、この最も内奥のもの、究極のものについて語っていた。すばらしい詩句であった。そして人間は、睡眠中、深い眠りの中で、彼の最内奥へ入り、真我(アートマン)の中に住むのだと書かれていた。(11-12)

 

世界の一如性、場物が互いに関連をもつこと、大きなものも小さなものもすべてのものが同じ流れに包括されていること、つまり、原因、生成、死滅という同じ法則に支配されていること、これがあなたの崇高な御教えから明るく輝く出しています。・・この一切のものの一如性と一貫性が、やはり一つの点で中断されています。一つの小さな隙間からこの一如の世界の中へ、異質のものが、新しいものが、それまで存在しなかった、そして示されなかった、そして真理として証明され得ないものが流れ込んでいるのであります。・・この小さな穴によって、永遠の、一貫性をもつ世界の法則全体がふたたび破壊され、否定されています。(46)

 

私自身に私は学ぼう。私自身の弟子になろう。そして私はシッダールタという秘密をすることを学ぼう(54-55)

 

この年月のあいだ、自分でも意識しないで、あのたくさんのい人々のような、あの幼児人間になる努力をし、それにあこがれてきた。そしてそうしながら、彼の生活は、あの人たちの生活よりも、はるかにみじめで貧しかった。なぜなら、彼らの目標は、彼の目標ではなく、彼らの心配事は彼のものではなかったからである。(109)

 

「あなたも河からあの秘密を学びましたか、時間など存在しないという秘密を?」

ヴァースデーヴァの顔は晴れやかな微笑みに輝いた。・・

「あなたの言いたいのは、このことでしょう?河はいたるところで同時に存在する、水源でも、河口でも、滝でも、渡し場でも、早瀬でも、海の中でも、山の中でも、いたるところで同時に存在する。そてい河にとっては現在だけが存在するので、過去という影も、未来という影も存在しない」・・・「そして私がそのことを学んだとき、私は自分の生涯を眺めてみた。するとそれも一つの河だった。そして少年シッダールタは壮年シッダールタや老年シッダールタから単に影によって隔てられているにすぎず、現実的なものによって隔てられているおではなかった。シッダールタの前世も決して過去ではなかった。そして死と梵(ブラフマン)への回帰も決して未来ではない。何ものも過去にあったのではなく、何ものも未来にあるのではない。あらゆるものは現在にある。あらゆるものは実際に現在存在する」(140)

 

とことんまで味わいつくして、解決されなかった苦しみは、すべて戻ってきて、同じ苦しみをくりかえし味わうことになるのだ。(170)